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余韻の色

紺色は余韻の色である。

夜を美しいと思えるのは、かならずや明けると知っているからだ。昨日の残響や明日への予兆をともなう夜の空は、漆黒というよりも限りなく黒に近いナイトブルー、つまり深い紺色として現れる。紺色は静かな光を見出す人の心に残る色だ。

今季選んだ鷹目石という素材も、まさにナイトブルーと言える濃紺だった。特徴的な名前は、その表情の現れ方に由来する。ながいながい時間をかけて繊維質の結晶体が折り重なっている。角度によって浮かぶ光沢が瞳の虹彩のように見えることから、”目”が名前に付けられる素材がいくつかある。鷹目石もその一つだ。

磨き上げた濃紺のピースにも、柔らかな光の帯が浮かんだ。その光沢は上質なベルベットのようだった。しっとりとした肌ざわり、濡れたような艶めき。限りなく黒に近いブルーのベルベットは、まさしく夜空のようだった。心に残る紺色だと思った。目立った色彩も輝きもなければ宝石にならないわけではない。そのしずかな光を使うことにした。

余談だけれど、人の目は暗いところでは青い光に敏感になるという。私たちはみんな、しずかな光を見出すまなざしを、生まれながらに持っている。だからこそ、この濃紺の持つしずかな余韻を感じてみてほしいと思う。