’26 Autumn & Winter
Labo
降りつもる時間
古い写真を眺めていると、そこに流れた時間まで見えてくるような気がする。
写されたのはほんの一瞬のはずなのに、その後に重なった褪色や黄ばみ、傷や曇りまで含めて、今の一枚になっている。黒や白、茶や灰色のあいだを漂うような色を見ると、写真は一瞬を留めるだけでなく、その後もずっと時間を抱え続けているのだと思う。懐かしさというのは、写された記憶だけではなく、その一枚自身が長く過ごしてきた時間から生まれるのかもしれない。
今回選んだサンドストーンも、以前からなぜか気になっていた素材のひとつだった。あらためて向き合う中で、その理由が少し分かったように思う。
サンドストーンは、細かな砂や鉱物が長い時間をかけて堆積し、圧されてできた石である。近くで見ると、ベージュや灰色、赤みや白い粒が完全に混ざり合うことなく、それぞれの色を残したまま一つの表情をつくっている。小さな粒や層のひとつひとつに、長い時間が静かに降りつもっているように見えた。
それぞれの粒は消えずに積み上がりながら、全体ではひとつの静かな色調を生み出している。その色は、手紡ぎ手織りの生地のように、細かな違いが折り重なることで複雑さと奥行きを持っている。私たちの定番素材である黒蝶貝や瑪瑙にも同じ感覚を抱いている。黒蝶貝の中に揺れる青や緑、瑪瑙の中に霞む白やわずかな濃淡。それぞれ異なるものが内側に残りながら、ひとつの穏やかな表情になっている。まばゆい色彩には語ることのできない、静かで豊かな美しさがそこにはあると思う。
人の中にも、過ぎた時間は小さな粒のように残っていく。選んだことも、失ったことも、忘れたと思っていたことも、いつの間にか折り重なり、今の自分の色になっている。その複雑さは濁りではなく、長い時間が育ててきた深さなのだと思う。
いくつもの時間を抱えながら、ひとつの美しさになっていく。今季のカラーチップに、そんな姿を重ねている。
’26 Autumn & Winter
Labo
LOOKBOOK
〈Labo〉では、自然素材が持つ豊かで繊細な表情を一つひとつ選り抜き、東洋的な色彩美と質感を探求しています。今季は、定番素材の「黒蝶貝」「瑪瑙」に、長い時間をかけて砂や鉱物が重なり合った「サンドストーン」を加えました。複雑な色の揺らぎと、ハンサムな中に温かさを宿した三色をお届けいたします。
お仕立てについて
〈Labo〉は地金の持つシックさと、石の持つプリミティブな魅力の調和を探求するシリーズです。素材は原石から探し、その中に埋め込まれている"景色"をピースとして切り出しています。
定番の黒蝶貝・瑪瑙については可能な限り受注できるようにしておりますが、基本的には一点ものとなり、ストックしている石の雰囲気も常に変わります。
’26AW限定石:サンドストーン
受注期間:2026年9月〜11月末
※会期後は現品販売のみでのご案内となり、その後のお仕立ては行なっておりません。