今季、新しい〈Chain〉を作ろうと思ったのは、女性たちの選択に感銘を受けたからだった。

3年前に〈Chain〉シリーズを作って以来、多くの女性が自分のために選びにきてくださった。特にボリュームがあるハンサムなものがよく好まれ、それぞれ皆さん理由やきっかけは違えど、未来の自分への約束のように選んでいたのが印象的だった。

その姿を見ていると、女性は自分に対しある種の“強さ”を求めているのだ、と思った。これから歳を重ねていく自分に対し、泰然と堂々としていられる強さ。それは男性的な見た目や丈夫さとはまったくベクトルの違う、時間を受け入れる心の在りように思えた。

だからこそ、あくまでも女性のための”強さ”を宿した〈Chain〉を改めて追求したかった。これまでは指に寄り添うような「薄さ」を意識した形作りをしていたが、今季はあえて「量感」を意識した。工業製品と言えるチェーンというモチーフに、柔らかな曲線を与えて身体的な張りをもたらし、女性の身体の延長のようなシルエットを作り込んだ。硬さではなく張りを、強靭さではなくしなやかさを、そして年を重ねるほどに馴染む存在感を、丁寧に手で形作っていった。総手仕事の時代の美しいチェーンのエッセンスを残し、工業的道具の概念から解放するようなプロセスだった。

女性たちが自分のための“強さ”を選び取りたい時、その選択が男性的なそれしかないのは勿体ないことだ。女性には女性の強さがあって然るべきであり、それはしなやかさと芯の強さを感じるような、奥深い品格なのだと思う。時を重ね、様々な経験を受け入れた人の心に宿る品格に、この〈Chain〉たちが寄り添うことができればと思う。