この仕事をしていると、“その人らしさ”とは何を通じて受け取っているのだろう、とよく考える。逆に、忘れられない人というのは、何によって脳裏に刻まれているのだろう。

それは「ディテール」なのではないか、というのが今感じている一つの答えだ。私にはもう10年くらい身につけている指輪とブレスレットがある。親しい人たちは私を名前や性格で認知しているが、この手元のスタイルも私の一部として捉えているだろう。一方、日常的に訪れるコンビニの店員にとっては、私の背景など知る由もない。けれど、レジで会計をするとき「いつもこの指輪をしている女性」という印象だけは残るかもしれない。つまり私という人間は、この小さなディテールによって個性が記憶されている可能性がある。

圧倒的な美貌の持ち主ならば顔で記憶されることもあるだろうが、それはあくまで外形の話だ。“その人らしさ”という視点で見れば、「目元の表情」「横顔のライン」といった小さなニュアンスにこそ心は惹きつけられる。だからこそ私たちは装身具を作るとき、シンプルで普遍的な美しさを大切にする。あらゆる人のささやかな個性に寄り添い、内面を投影できるように。

今季探求した〈Nude〉のバングルやピアスも、シルエットの美しさを徹底し、細部に宿るその人らしさを静かに引き立たせるものを目指した。手元はとてもパーソナルなパーツであるし、耳元はそれこそ十人十色。『神は細部に宿る』という言葉があるように、その人らしさはきっとささやかなところ、つまり、小さな輪郭の中に眠っている。装身具の役割は、その眠れる魅力を呼び覚まし、自分自身の輪郭をそっと確かめることにあるのかもしれない。