'25SS BASICS
Nude bangle
在り方としてのハンサム
30歳を過ぎた頃だったろうか。自分の装いについて、どことなく違和感を覚えるようになった。昔から「可愛い」ものより「ハンサム」なものが好きだった。服は素材や仕立てが重要で、靴は歩きやすくなければ選ばない。どれも自分にとっては、ごく自然な選択だった。けれど、そうした「ハンサム」なものを追い求めると、“男性的”という文脈に回収されてしまうことが多かった。
メンズをそのまま小さくしただけのユニセックス。中性的というより、縮小版の男性服。それ以外の選択肢は、どこか旧来的な女性性の中に押し込められている気がしていた。成熟した大人の女性のスタイルは、果たして本当にユニセックスなのだろうか。歳を重ねるほどに、自分はどう在りたいかを深く考えるようになった。
女性が女性らしくあることと、格好良くあることは、きっと当たり前に両立する。装身具の中でもっともハンサムなスタイルと言えるバングルを通じて、その在り方を体現したかった。
存在感の強い男性的なものか、華奢で繊細な女性的なものか、バングルの選択肢はあまりに限られている。私たちは、女性のためのハンサムをかたちにするべく、一から構造を作り上げることにした。華奢さに逃げず、重すぎることもない。ゴールドだけ、またはシルバーだけではなく、そのどちらの質感も携えたニュートラルな面持ち。存在感を誇示するのではなく、抑えることで立ち上がる静かな強さ。場に馴染みながら、自分の輪郭を損なわない。ハンサムな在り方ごと、このかたちに託した。
女性のライフステージや選択には見えづらい線引きがある。その何にもおもねらず偏らず、誰もが自分の心地よい在り方を探し続けること。それは案外難しいかもしれないけれど、そう在りたいと思う姿勢自体が、女性ならではの品格を滲ませていくのではないかと思う。
強くありながら、軽やかでいる。 自分の心地よさを大切にしながら、それを誰かに押し付けない。 自由に振る舞いながら、節度を保つこと。
私たちはそんなハンサムな女性たちを応援するべく、18年目も物作りを続けている。このバングルがその姿勢を貫くための支点となれたら、と願っている。