‘25 Autumn & Winter

LABO _ 黄昏れ

黄昏れの時

黄昏れ時は、過去の記憶と静かに再会する時間だ。

今季の素材たちを見たとき、時の流れの軌跡が、まるで絵画のようにそこに残されているように感じた。虎目石は、鷹目石が長い年月をかけて変容し、ようやく金色を帯びた姿となる。その原石には、鷹目石でもあり虎目石でもある、“あわいの時間”が刻まれている。瑪瑙もまた、数万年前に何が起きたのかを私たちに知らせることはない。ただ唯一無二の景色を通して、「確かに時間が流れていた」という痕跡を見せてくれる。

どちらの素材も、とても複雑で繊細で、静かな美しさを湛えている。その景色は、黄昏れ時の光景に重なる。ぼんやりとしたあわいの色合い、鮮やかさを手放してなお、深みを増す光。過去を現在がやさしく染め上げていき、また新しい色を生み出していく。黄昏れ時は、ただ日が沈むのではなく、今と過去とが折り重なってゆくことを最も感じられる瞬間なのだ。

黄昏れの語源は「誰そ彼」。薄闇に人の顔が見えなくなり、「あなたは誰?」と問う時間帯を意味していたという。顔が見えないという夜が少なくなった現代でも、黄昏れ時は変わらず時間や記憶の輪郭をぼかし、その中に生きる私たちの中に問いかける。「あなたは誰?」と。

その問いに、私たちはこう答えるだろう。それはきっと、過去の小さな日々をすべて抱えた「いまの私」である。 だから黄昏れ時は、決して終わりに向かう時間ではない。むしろ、歩んできた時間のすべてが重なり合い、やわらかく、深く、成熟の色となって滲み出す時なのだ。

黄昏れ──それは、人生における成熟の時。 黄昏色は、成熟の色なのである。

‘25 Autumn & Winter
LABO _ 黄昏れ

LOOKBOOK

今季LABOは「虎目石」と「瑪瑙」の二種の素材を用いたコレクション。組成もまったく異なるそれぞれの素材に、時間の軌跡のような表情を見出し、それぞれに移ろいを感じる景色を捉えて切り出しています。一つずつデザイナーによって景色を引き出され、職人たちの手で磨きあげられたピースは、自分だけの絵画を手にするような豊かな出合いとなることでしょう。原石の中は1mmずれれば全く別の景色となるほど個体差があるため、同じピースはご用意できません。豊かな表情が魅力の1点ものコレクションとしてお楽しみください。