‘26 Spring & Summer

BASICS _ Chain

時を連ねる

近頃、あらためて〈Chain〉を手に取ってくださる方が多い。 チェーンは古くからある、とても普遍的なモチーフであるけれど、私たちが〈Chain〉を作り続けているのは、単に古典的な意匠だからではない。ひとつのものが途切れずにつながることで、まだ見ぬ美しさが浮かぶ。"連なる"ということに、工業的な堅牢さとはまた違う、しなやかな強さを感じている。そして、その形はどこか、一人の女性の時間の形でもあるように思う。

女性に限ったことではないけれど、人は、大きな出来事ひとつで出来あがるわけではない。選んだこと、選べなかったこと。大切なこと、失ったこと。うまく言葉にできないまま過ぎていった時間さえも、あとから振り返れば自分を形づくる輪のひとつだったと思うことがある。過去と今と未来は、ばらばらにあるのではなく、本当はずっとつながっている。

少し前、「早くおばあちゃんになりたい」と言って驚かれたことがあった。けれど私が憧れていたのは、孫がいるというような属性としての“おばあちゃん”とは違う。長く生きた時間がその人の中で一つの連結した線になっていく。そのことを知り、時を重ねることを楽しめる女性たちのことだ。歳を重ねることは、得ること失うこと全てが自分の物語のひとこまであり、自分でそれを繋げていくことなのだろう。

〈Chain〉のほどよいボリュームや、ほのかなクラシックさ、時代に左右されにくい佇まいは、今の自分だけでなく、まだ見ぬ未来の自分にも相応しくなるように。一周近く同じ形を連ねているからこそ、さまざまなものを受けいれてくれる。例えば、若い日の自分が選んできた華奢なものも。過去から今へ、今から未来へ、ずっと繋げてくれるようなアイテムなのだと、アップデートを繰り返しながら強く感じている。

未来の自分へ手渡していけるものを、今の自分が選ぶ。その感覚には、流行のものを手にする時とは違う静かな意思がある。自分の生きてきた時間を信じること。自分が選んできたものを信じること。完璧な自分を信じるということではなく、迷いながらでも、揺れながらでも、それでも自分の人生はひとつながりのものとして続いていくのだと感じられること。

〈Chain〉は、自分への信頼の証。身につける人の中にその連なりがゆっくりと育っていくことを、静かに見守っていたい。

‘26 Spring & Summer
BASICS _ Chain

LOOKBOOK

手仕事によって生み出す、確かな存在感と馴染みの心地。2020年よりご案内している〈Chain〉は、今季よりそれぞれのチェーンにネーミングがつきました。“Brick chain” ”Lip chain” “Fob chain”と、手仕事の時代のチェーンを着想源にしながらも、アトリエの現代的な解釈をもった独自のチェーンたち。細身でも確かさを感じられるもの、たっぷりとした格好よさがあるもの。女性たちそれぞれの美しさを引き出すラインナップとなっています。