20SS Labo Monotone
like a silk
私たちは懐かしくて美しいものを作るのだと、実感させてくれたのは初めて白蝶貝での創作に取り掛かった時だったように記憶しています。もう6年以上前のことです。いわゆるスタンダードな宝石として知られるダイヤや真珠のような晴れやかなイメージでもなく、かといって天然石のような自然味の強くでた味わいでもなく、白蝶貝の質感はただただ穏やかで、柔らかかった。装身具がその人にとって異物である以上、一生という時間に馴染むことはないだろうと考えていた中で、試作を進めていくと白蝶貝は少し磨いてあげるだけで、すべすべの柔らかな光沢を見せてくれました。その時、いわゆる宝石にはあまり感じることのない"触れたい・撫でたい"という気持ちが込み上げてきたのを覚えています。素材というよりも、人肌を感じるような質感。白蝶貝自体が生き物で、タンパク質を中心にした組成をしているのだから、似ているのは必然なのかもしれません。それでも、磨きあげた白の柔らかさは圧倒的に優しく、シルクのように懐かしい心地を手に残していきました。
実は白蝶貝のコレクションのモデルは、初めて取り組んだ当時から今も大きくは変わりません。優しい乳白色のとろみが活きるたっぷりとした形取りや、身体と一体になるような滑らかで選び抜かれたシルエット。年代物の白蝶貝ならではのしっかりとした厚み。そしてこの厚みが生み出す瑞々しさ。素肌が出る夏の時期であれば溶け込むし、冬の時期にも程よい存在感で馴染んでくれる。毎年ディテールのブラッシュアップはしていますが、結局しっくりとくるこのモデルに着地したくなる、というのも現在一つの答えです。素材に初めて触れた時の幸福感を、今もずっと反芻するように作り続けています。