'19AW Collection

Special One-Off

Your scenery

水晶について思索を深める中で読み返した『陰翳礼讃』の中の一節。「われわれは一概に光るものが嫌いと云う訳ではないが、浅く冴えたものよりも、沈んだ翳りのあるものを好む。」この言葉に惹かれました。少しつむじ曲がりな物言いにも思えますが、ここに私たちの好むニュアンスが絶妙に表されていると感じます。

素材の探求をする中で出合う複雑なニュアンスの石たちは、本当に見る人それぞれに美しさの捉えどころが異なる、興味深いものです。少し強い言い方をすると、誰にでもほどほどに好かれるのではなく、好き嫌いがはっきりとするもの。宝石との出合いには、そうした刺激的な側面も存在します。

今季はオパールと、ナチュラルな表情のダイヤモンドをご紹介します。

まるで光の塊を小さな砂のように細かく砕いてちりばめたような、色とも質感とも言い難い表情は、美しい和菓子が口の中でほころぶような喜びに似ています。そんな、非常に繊細な味わいのオパールが集まりました。

通常の宝石とは違った構造を持つことによる「遊色」と呼ばれる輝きをたたえた石ですが、古代ローマからその存在は知られています。当時の博物学者プリニウスは、その独特なきらめきを“カーバンクル(赤い石の総称)、エメラルドやアメジストなどの宝石の色が融合し輝いている”と語ったそう。Opalという名前も古代インドで「宝石」を表す言葉が変化したものだといいますから、正にぴったりの表現だったのではと思います。

自然味豊かなダイヤたちは、その存在と初めて出合う方々には驚きをもって迎えられます。こうした表情のダイヤをここ何年も集め続けていますが、今回は豊かな個性のみならずダイヤらしい光の反射が際立つものが集まりました。今季はモノトーンのダイヤと、ブラウン系のカラーを持ったダイヤを選り抜きました。感覚をぴりっと刺激するものがありましたら嬉しいです。

ダイヤは古いもので数十億年、新しいものでも数百万年の時を経て生まれたと考えられている、生成時間が極めて長い鉱物です。目の前にある小さな一粒が太古から濃縮された時間を宿していると思うと、ただただ素直な驚きと、尊さが沸き起こる。これほど不思議な気持ちにさせてくれる出合いも、そう多いものではありません。

こうした石たちをご自身の目で確かめて頂き、サイズに合わせてお仕立てしていきます。色や輝き、中に描かれる風景は様々。それらは見る人の感受性により、無限の広がりを得るものです。