salon MEDERU 企画展
豊かな潤み _ Labo for Opal
開催期間 2021.6.11 ~ 6.27
咋夏の雨上がりにアトリエの庭へ出た時、寄せ植えの草花たちに雨粒が乗ったままになっていた。ふっくらと張った水滴をよく見ると、庭の景色が映っていた。水に包まれ、そこにある景色がより澄んでいるように見えたのが印象的だった。
その時の光景を思い出す素材と出合った。ウォーターオパールと言って、オパールの一つだ。日本の人たちにとっても馴染みの深い宝石の代表的存在のオパールだが、このウォーターオパールはいわゆるオパールにある華やかな印象とはまた趣が異なる。水滴のように透明で、白い場所に置くと存在そのものがないようにさえ感じる。光が当たると内側でプリズムが生まれ、やっとそこに何かがあると分かるほどの静かな存在感だ。
多くの場合、オパールは遊色と呼ばれる虹色のプリズムが石の表面に浮かび、華やかに彩るものが注目されやすい。オパールという名前も古代サンスクリット語の「ウパラ」をルーツとし「宝石」という意味があるとされる。昔の人が出合った時の感動を想像できるが、このウォーターオパールには宝石美というよりも、もっとプリミティブな魅力を感じている。光や水に通ずる原初的な美しさだ。そもそも光を固めることはできないし、水は氷となって全く違う質感に変わってしまうけれど、このオパールにはそうした時の流れの中で凍結できないはずの一瞬の光や空気が含まれているように思う。いつかの光を固めた、琥珀のような存在に見えてくるのだ。
この質感の理由にはオパールの成り立ちが関わっている。少しマニアックな話だが、オパールは実際に水を多く含んだ非結晶の素材である。これが長い時間をかけて水分が蒸発し高い圧力で結晶構造へと変化していくと、最終的に水晶や瑪瑙となる。つまり、オパールはそうした変化の途中に生まれる非結晶の素材であり、液体と固体の間のような存在だ。ゆえに他の透明な素材では見ることのできない柔らかさと、濡れたようなつやが生まれる。それは不思議なことに、私たちが見てきたモノトーンの素材たち−−真珠や白蝶貝に浮かぶ虹色の干渉色や、水晶やダイヤに見る透明性といった魅力を、一つに内包しているようにすら思える。
雨が木々を洗い、清々しい光を見せてくれるように、豊かな潤みは美しい景色を映し出す。この水のような美しい素材を、この雨の時期に見て頂けるのもまた良い機会だと思う。今季は透明なものに加え、少しオレンジに色付いたものも選ぶことにした。着けてみると朝日が沁み入るように馴染むのを、ぜひご体感頂きたい。
salon MEDERU 企画展
豊かな潤み _ Labo for Opal
開催期間 2021.6.11 ~ 6.27
宝石と言われる素材たちはそもそも自然から生まれ出るものであり、その一粒一粒に繊細な揺らぎや豊かな個性を宿しています。企画展ではその自然美を生かした”一点もの”のお仕立てを通じて、mederuの定番アイテムとは別のご自身にとって馴染む個性との出合いをお届けしたいと考えています。