Product Journey

時間の輝き

私たちにとって真珠はずっと特別な存在だった。それは真珠という素材と向き合うほどに、確かなものになっていた。

多くの宝石と真珠とでは、人の関わり方が大きく異なる。他の宝石は、何万年という長い時間をかけた自然の原石があり、人が加工することで“宝石となる”。それに比べ真珠は人の手できっかけを与え、人の手で取り出される。生まれた時からすでに美しい宝石である。真珠だけが人が生み出せる宝石なのだ。つまり真珠の美しさは、作り手である養殖家の経験と美意識と自然観との掛け合わせによって、繊細に変わってくる。

私たちが信頼するアコヤ真珠の養殖家は3代にわたってその美しさを追求している。彼らは一般的な養殖の倍近い時間をかけて真珠を育てている。真珠層が厚く育ち、色と光沢に奥行きが生み出せる。一方で母貝の致死率が上がったりと、決して生産効率が高い方法とは言えないが、より長く愛せる美しい真珠作りを追求している。年々変わっていく海の状況と向き合いながら、海や貝と対話を繰り返す。物言わぬ相手に人ができることは見守りながら丁寧に手をかけていくだけだが、その真摯な向き合いに触れるたびに、真珠一粒一粒が一年越しに生まれる一つの作品のように思えてくる。だからこそ私たちが形にする段階でそのすでに美しい作品を無下にはできない、と身が引き締まる。養殖家との共作のような気持ちで一つの装身具へと仕立てている。

私たちの選ぶ真珠は、その中でもブルーグレーの少し揺らぎのある形をしたバロックパールだ。彼の生み出すブルーグレーの真珠を目にした時、日本の海や空の色調が映し出されているように思えた。どこか気高さの漂う白と比べると、自然体の凛々しさを感じる珠だ。このブルーグレーの色も、今の海の状況では生まれづらくなってきていると言う。それも淡々と受け止めながら、彼は今年も真珠を育てている。

あらゆる時間を積み重ねて真珠は生まれている。貝が生きる時間であり、養殖家が向き合う時間でもある。その深い色艶は美しい時間の輝きなのだ。だからこそ、使い手である私たちが歳を重ねていった先にも、真珠は寄り添ってくれると信じている。自分たちの髪の色がこの真珠たちのようにグレーや白に変わった時、きっとより凛々しく美しく見えるのだろう。

(次のJOURNALでは、特別な企画展として、より個性が現れた真珠を集めて仕立てた1点もののコレクションについてご紹介します。そちらもどうぞお楽しみに。)


あこや真珠 _ Pearl

 

受注開始:2021.5.14 ~
シーズン中は受注予定ですが、来シーズン以降にマイナーチェンジすることもございます。あらかじめご了承ください。

» '21SS COLLECTION BASIC Vol.02
» Items / '21SS Pearl