22SS LABO _ 真珠 Pearl
はるかなる光
数年前の暑い夏、真珠のふるさとを初めて訪れたとき、なぜだか妙に懐かしい気持ちになったのを覚えています。ぽこぽこと丸い山並み、しずかで穏やかな海、段々畑に柑橘の木々。ちょうど地元のお祭りと重なったのも今思えば幸運でした。日本昔ばなしのような景色に、心の奥深くに眠っていた遠い記憶が照らされたように思えたのです。
そこで生まれる真珠もまた、私たちの原風景を照らし出す光です。 豊かな海で生きたアコヤ真珠の母貝は、さまざまな形や大きさ、色を生み出します。神秘的なほど純白の珠、海の色を巻き込んだようなグレイッシュな青い珠、緊張感のある丸珠や溌剌と自由な珠。それらが一体になって光を湛える姿は、かつて真珠たちがいた豊かな海のゆらめきそのもの。真珠は最古の宝石と言われますが、その本質は、ただただ美しい自然の実りであることを思い出させます。
おそらくそれは養殖のない古代の人たちの方が、より切実に感じたことでしょう。すべては自然のおもむくまま、真珠に出会う確率も天の定め。だからこそ、偶然拾った貝から現れた光のかたまりは、一粒一粒、大切に集められました。私たちが特に惹かれたのは無調色のグレーのバロックパール。一粒一粒並べていくと、あたかもオブジェのような美しさです。先人たちが目にした美しさの原風景が広がっているようでした。
日本の「万葉集」にも、古来の真珠を題材にした唄がたくさん残っています。 最後に、この唄を取り上げて終わりにします。
《白珠は 人に知らえず 知らずともよし 知らずとも 吾し知られば 知らずともよし》
ーー真珠の真価は人に知られていない。しかし、人は知らなくてもよい。人は知らなくても、私さえ知っていたら、人は知らなくてもよい。ーー
貝がからだの奥深くに美しい真珠をしまっているように、私たちは心の奥深くではすでに美しいものを知っています。あなたが見出した真珠の美しさは、いつだって人々を励ましてきたように、これからの道を照らし出す小さな光となってくれるはずです。
salon MEDERU 6月企画展
’22SS LABO _ 真珠 Pearl
企画展会期:6.17-7.18
現代最もスタンダードな宝石の一つ、真珠。白くて丸い完璧な美しさというイメージがありますが、その表情は真珠の一側面にすぎません。アトリエが選ぶのはブルーグレーのバロックパール。色も形もすべて自然のもので、古代の天然真珠の面影を残す珠です。6月の企画展ではその珠一つ一つが持つ美しさを生かした一点ものを多く仕立てました。合わせて6月からBASICの真珠コレクションの受注を再開いたします。真珠の豊かな個性を感じて頂くとともに、自分だけの美しさに気づくという機会になれば幸いです。
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企画展は一点もののコレクションとなります。お渡しは会期終了後の7月中旬以降となります。あらかじめご了承ください。
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BASICの真珠コレクションは企画展会期後も受注を承ります。(※素材がなくなり次第、受注終了となる場合もございます)
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素材の特性上、Webオーダーは承っておりません。サロンやキャラバンにお越しが難しい方は、オンライン上でビデオを繋ぐ「Online Boutique」にてご案内も可能です。