23SS LABO
JOURNAL for〈MOSS〉

みどりのつやめき

みどりの黒髪、という言葉がある。

つやのある美しい黒髪のことを指す表現だが、なぜそれが”みどり”なのか。改めて調べてみると、”みどり”は若葉や新芽のつややかさを表しているそうだ。生まれたての赤ん坊が”みどりご”と言われるのも同じ理由である。”みどり”とは色ではなく、奥深くにたたえる生命のつやめきである。

つやめきを”みどり”と喩える感性は、日本特有だ。私たち日本人は山と海に囲まれ、一年の間に四季が訪れる、世界基準でも豊かな自然の移ろいの中で長く生きてきた人々である。日本語の繊細さも曖昧さも、その豊かな自然によって育まれてきた。自然が内包する豊かさを誰よりも身に染みている民族だからこそ、”みどり”を色に留まらない概念で「つやめき」として捉えることができたのだろう。

私たちが今回出合ったピースは、まさにそれを思わせる”みどり”であった。静かなつやに心惹かれたあと、これらがトルマリンとサファイアであることを知った。どちらも古くから身を飾る宝石として重宝されてきた素材ではあるが、今回のピースは宝石然としすぎるところがなかった。青とも緑ともいえない繊細な色調に、濡れたような質感。苔むす庭を思わせる静けさの奥深くに、生命力をたたえたようなつやを持っている。これらは日本の女性たちに馴染む“みどり”であり、”つやめき”だと感じた。一粒一粒繊細に異なるつやを引き出しながら、丁寧に仕立てた。

章の最初に、”みどり”は若葉や新芽のつややかさを表していると書いた。生まれたてのはち切れんばかりの瑞々しさは有無を言わさず感動するが、その後の穏やかになじみ始めて滲み出るつやめきも、また静かに見入ってしまうものであると思う。日本を覆う照葉樹林が織りなす深いつやめきも、苔むす庭の濡れたような静かな光りも、長い時間をかけて美しく育ってきた。私たちもじっくり歳を重ねながら、美しいつやを重ねていくことができるのだと、信じている。

salon MEDERU 6-7月企画展

23SS LABO
JOURNAL for〈MOSS〉

リリース予定:2023.6.13(火) -7月中旬
しっとりと濡れたようなつやを持つ奥深い緑の素材は、トルマリンとサファイアです。どちらも古代より重宝されてきた宝石の代表格ではありますが、今季出合うことの出来たピースは自然の風合いを豊かに宿したものでした。それらの穏やかで静かなつやめきを、ピースに合わせて仕立てた1点もののコレクションです。日本特有の湿度を伴うこの時季にご覧頂くことで、なおその美しさをご体感頂けるのではないかと思います。

  • ピースの数が非常に少ないコレクションです。お取り置きなどは承っておりません。
  • 石の内側に見える傷や気泡のような表情は、自然に生まれる繊細な個性です。素材本来の魅力としてご理解ください。
  • サロンやキャラバンへのお越しが難しい方はオンライン上でビデオを繋ぐ「Online Boutique」にてご案内いたします。