'25SS BASICS update

Old-cut diamond -Tiny-

Quiet Maturity

シックスタイルは成熟のスタイル。若き日から様々な選択を経て、だんだんと自分の型のようなものを身につけ、時間をかけて完成するものだと思う。特にジュエリーは、10代20代の頃とその先の年齢では向き合い方に変化が起きやすい。だからこそ、過去の自分とこれからの自分、そのどちらをも肯定できるようなものを作りたい。そんな気持ちが常にあった。

今季Old-cut diamondの〈Tiny〉の中で、アラウンドリングというモデルに取り組んだ。形はいたってシンプルかつ普遍的なゴールドバンド。MEDERUがもっとも大事にしている形に、極小のダイヤを並べて留めている。見た目はシンプル。けれど、奥深い。このバランスが、様々なスタイルや時間を丁寧に繋げてくれるものになっている。

このダイヤが一列に並ぶスタイルを、一般的には“エタニティ”と呼ぶことが多い。「輝きが永遠に続く」というイメージだ。けれど、私たちは目映い輝きを主役に据えるのではなく、ゴールドとダイヤで生まれる新しい味わいを目指してきた。ダイヤはオールドカットのピース。400年程前の手仕事の時代のカッティングは、ダイヤの原石本来の透明感を損なわない。その自然な美しさが、ゴールドに溶け込み、身につける人にも穏やかに寄り添う。

さらにそれらを全て、ゴールドを彫り込んで一石ずつ留める「彫り留め」という古典技法で留めていく。これは現代だと手間がかかり効率が悪いという理由で廃れてきた手仕事の一つであり、実際に美しく仕上げられる職人はすでに僅かだ。しかし、手彫りの奥行きやかすかな揺らぎは、機械には代え難いニュアンスを生む。時間や手間がかかれども、この静謐な味わいこそが、シックスタイルをさらに確かなものにすると感じている。

ストレートの形はどんな指輪にも調和する。〈Je t'aime〉のように中央にデザインがあるものにも、〈Chain〉のようにしっかりボリュームがあるものにも、そっと寄り添う。もちろん、色彩のものにも。どこまでも馴染みながら、より味わい豊かな手元へと歩みを進めてくれる。

心境の変化を感じる人も、きっと過去の自分の選択が間違っていたのではなく、ただ静かな成熟を歩んでいるだけなのだ。このアラウンドリングを通じて、その繋がりを感じてもらえるのではないかと密かに期待している。

Old-cut diamond -Tiny-

LOOKBOOK

今季はストレートのゴールドバンドに対し、極小のダイヤを一列に並べて留めた〈around〉のモデルをupdateしました。リングの幅やダイヤの留め方のデザインにもいくつかのバリエーションがあり、自身のお好みのバランスでお楽しみ頂けます。輝きよりも奥行きを加えるような、MEDERUらしい端正なダイヤのリングです。定番のK18イエローゴールドに加えて、今季に限り、ご結婚指輪などにも合わせやすいK18ホワイトゴールドでのお仕立ても承ります。