
'20SS Product Journey - Jade
もしもこの初夏の風を描くとしたら、翡翠のような色をしているのではないだろうか、と思います。
もしもこの初夏の風を描くとしたら、翡翠のような色をしているのではないだろうか、と思います。
私たちは懐かしくて美しいものを作るのだと、実感させてくれたのは初めて白蝶貝での創作に取り掛かった時だったように記憶しています。もう6年以上前のことです。
グレーという色をとても魅力的に思います。絵具のチューブから出すグレーは重たい鉛のような色ですが、私たちが何より印象的だったのは真珠のグレーです。
今季に限らず、私たちは長らく水晶の透明性を見つめてきました。その性質上、何も手を加えなければガラスのように光が通り抜けるだけ、手を施しすぎると他の影響を大きく受けて印象が様変わりしてしまう。
赤と青と黄の光を混ぜると、白い光になる。空が何色に見えるかは、この光の波長の仕組みによる。これを学んだ時には不思議で仕方ありませんでした。一方で、赤と青と黄の絵の具を混ぜ合わせたら、黒色が生まれる。
一枚の絵が目に留まりました。スークで地面に腰をおろし、籠に盛った柘榴を売る少女。フランスの画家ブグローが描いたものです。この少女を描いたポートレートもあり、柘榴を手にした彼女のはっきりとした黒い眉と眼差しがとても美しいものでした。
画家の藤田嗣治の回顧展を観に行ったとき、渡仏した直後に藤田は冬のパリの曇り空を「真珠のような空」と表したと綴られているのを目にしました。
水晶。何色でもない、真っ透明なその鉱物。無垢であり、無味ともいえます。他の宝石と比べれば取るに足らないと思う人が多いかもしれませんが、私たちはそんな水晶に惹かれ続けています。