'19AW Collection

Mother of Pearl - 白黒蝶貝 -

モノトーン

赤と青と黄の光を混ぜると、白い光になる。空が何色に見えるかは、この光の波長の仕組みによる。これを学んだ時には不思議で仕方ありませんでした。一方で、赤と青と黄の絵の具を混ぜ合わせたら、黒色が生まれる。これも幼心に驚いた記憶があります。このモノトーンの中には、無限に繊細に、光と色が重なっているのだと感じます。

いわゆるジュエリーの歴史は宝石の歴史と重なります。権威と富を象徴する宝石は、輝けば輝くほど良いとされ、色彩に溢れていました。ではモノトーンの素材はジュエリー史に登場しないかというと、実はそうでもありません。

18世紀を中心に生まれた"モーニングジュエリー Mourning jewelry"と呼ばれる故人を想い喪に服すためのジュエリーには、黒い宝石やブラックエナメルがよく使われました。飾り立てる華やかさではなく、内面を見つめるための静けさ。それは私たちが求めるジュエリーと重なる美しさです。

今季の蝶貝の使い方は、このモーニングジュエリーでの仕立て方と似ています。エナメルを焼きつけるように、ゴールドと一体に擦り出す。飾り立てるための装飾ではなく、自分に馴染んでいくための形です。

ちなみに、絵の具を混ぜて生まれた黒は、厳密に言えば茶に近い黒色。チューブから出す漆黒のような全てを飲み込む重さはなく、周りと馴染む柔らかなトーンです。それはまさに私たちが愛する黒蝶貝の表情とよく似ています。美しいモノトーンは、無限の光の粒であり、繊細な色彩の調和です。きっと見る人それぞれの記憶に呼応して、照らし出される美しさがあることと思います。