JOURNAL

時間の輝き

時間の輝き

私たちにとって真珠はずっと特別な存在だった。それは真珠という素材と向き合うほどに、確かなものになっていた。 多くの宝石と真珠とでは、人の関わり方が大きく異なる。他の宝石は、何万年という長い時間をかけた自然の原石があり、人が加工することで“宝石となる”。それに比べ真珠は人の手できっかけを与え、人の手で取り出される。生まれた時からすでに美しい宝石である。真珠だけが人が生み出せる宝石なのだ。つまり真珠の美しさは、作り手である養殖家の経験と美意識と自然観との掛け合わせによって、繊細に変わってくる。

静かな調和

静かな調和

たくさんの古いジュエリーを見てきた中で、これは好きだと思えるものは実は一握りだ。繊細ではあっても華美に見えたり、モダンではあるけど作りが雑なこともある。惹かれるのは緻密さとモダンさと上品さが同居しているもの。数は多くないからこそ、出合えると嬉しい。

始まりの色

始まりの色

〈白蝶貝〉を使って仕立てるようになって、かれこれ7年ほど経つ。7年前、今季のSEASON素材で取り上げた〈瑪瑙〉と合わせてmederuの“素材探求”は始まった。装身具を作る中でも"宝石"や"天然石"という肩書にピンとこない私たちにとって、この探求は“懐かしくて美しい”というテーマに出会う原点となった素材だ。

ふるまいのための装身具

ふるまいのための装身具

私たちはこれまでも、様々な美しい装身具の姿を現代にアーカイヴするという研究を続けてきた。特にゴールドは、装身具の“素の形”を見極める旅でもある。今季はそのアーカイヴに2つの素の形を加えることにした。

緑響く青

緑響く青

「碧」という漢字は「あお」とも「みどり」とも読むことのできる字だ。今季出合った天河石は、この字を当てたくなる。この石を見ていると、日本画家の東山魁夷が描いた《緑響く》という名作を思い出す。湖や池の色であり、その周りの草むらや森の匂いも含んだような、静かな緑青色である。

あわいの景色

あわいの景色

私たちにとって瑪瑙とはすぐそばにある美しさに気づかせてくれるものだ。 今季使っている瑪瑙の原石は、アフリカのごく一部地域で採れる小さな原石。瑪瑙はあらゆる場所で採れ、その土地の地層を表すような縞の積層が特徴とされる。ダイナミックな縞模様が多い中、今回出会った原石は縞模様がとても細かく、グラデーションを描くように繊細な積層をしている。

個性がもたらす調和 _ ‘20AW Special Order

個性がもたらす調和 _ ‘20AW Special Order

素敵に歳を重ねていく方を見て"シックである"と言えると思いますが、ではそもそもシックとは何でしょうか。なかなか一言でいえないですし言い切るのが野暮にも思えるのは、それぞれの個性があることこそがシックであるからのように思います。

霧の中で

霧の中で

日光を訪れた数日間は天気がぐずつき、山間はずっと霧が出ていた。快晴の美しさもさることながら、白い霧に包まれた景色はとても美しかった。遊覧船から見た湖ごしの遠い山並みもたくさんの木々も、霧に溶け込むことで同じ景色となり、一つの水墨画を見ているようだった。

苔のむすまで

苔のむすまで

ある夏の雨の日、人がほとんどいない日光東照宮を訪れた。恥ずかしながら初めての来訪で、その神殿の意匠のクオリティに驚かされた。あらゆるモチーフや意匠で埋め尽くされたその一つ一つが繊細かつ大胆で、あまりのスケールに言葉が出なかった。世界遺産であることにも大いに納得だった。

stoic for pearl

stoic for pearl

埋め込まれているのは、小さな小さな真珠です。 そうお伝えして、やっと気づかれるほどの存在感。今季のタイニーパールリングです。凛とした真珠の姿は、上品な美しさを添えてくれる。

白くある意志

白くある意志

雪は白いから嬉しくなる。もしも雪に色がついていたら、何色であれ、なんと禍々しい世界だったことだろう。天の采配には感謝だ。それにしても都会の雪はすぐに踏まれて汚れてしまう。真っ白でいられるのは、ほんのわずかだ。

余韻の色

余韻の色

紺色は余韻の色である。夜を美しいと思えるのは、かならずや明けると知っているからだ。昨日の残響や明日への予兆をともなう夜の空は、漆黒というよりも限りなく黒に近いナイトブルー、つまり深い紺色として現れる。紺色は静かな光を見出す人の心に残る色だ。

うるわしの赤

うるわしの赤

赤はいつも一歩先の色だ。これは私の勝手気ままな言説だけれど、大きく間違っていないとも思っている。つばきの花も、シャネルの口紅も、凛と美しい空気ごと連れてきてくれる。だから取り入れる自分も、すこしだけきれいな精神で臨むことが必要だ。

緑は香りのように

緑は香りのように

翡翠の緑。赤ほど強くなく、青ほどクールでもない、穏やかな光に満ちた色。けれど緑という色がファッションとして馴染みやすいか、と聞かれるとどちらかといえば難しい色だという認識でしょう。